ホーム > 新・さすらい放浪記 > 新さすらい放浪記…韓国編その③

新さすらい放浪記…韓国編その③


※[前話]韓国編その②はこちらから

[2009年10月26日(月) 韓国・ソウル]

目を覚ますと、高い角度からの日光が部屋いっぱいに射しこんでいた。

写真①…今日もアンニョンハセヨな一日が幕を開ける

写真①…今日もアンニョンハセヨな一日が幕を開ける

どうやらすっかりお昼時のようである。

異様に腹が減っていた。

起き出し服を着こみ、すぐさま昼飯を食いに外へ出る(写真①)。

ホテルから一歩出ると、背広を着たサラリーマンやOL、作業着を着たおっさんらが、いかにも「食後でござい」と爪楊枝を咥えうろついている。

どこに入ろうかな?

海外でメシ屋をチョイスするさいのコツ。

アレコレ考えず、少しでも惹かれるものがあるお店なら迷わずサッと飛び込むこと。

詮索したところでどんなお店なのか分かるはずもないし、一度迷い始めるとその後もなかなか決まらず無駄に体力を消耗するだけだ。

というワケで、ホテル真横の小洒落た定食屋のようなお店に飛び込む。

「アンニョンハセヨ」

テーブルに着くと、オイキムチが大好物なのび太くんのお母さんのような顔をしたおばちゃんが気軽に挨拶をしてくる。

どうやら俺を韓国人と信じ疑っていないようだ。

壁に貼られたメニューを見ても…ハングルなのでチンプンカンプン。

とりあえず俺は隣の席でオッサンが啜っているスープを指差し、

「Please That one」

と、本当は得意でも何でもない英語をさも得意なように見せかけ(それだけは得意である)注文をこなす。

俺の独断だが、韓国の年配者はほとんど英語を話せない。

そんな彼らにカタコトとはいえ英語で話しかけてしまうことは、一瞬にしてこちらの立場を有利に導く秘策であることを経験的に知っている俺は実にイヤなやつである。

予想通り、助けを求めるように厨房へ向け頼まれた料理の名前を叫ぶおばちゃん。

これにて無事注文完了。

数分後、完璧なことに隣のオッサンのと同じスープが運ばれてきた。

柄の細い韓国特有の細長い金属製スプーンで中身を軽くかき混ぜてみると、豆もやしがドッサリとその上部を覆っている。

一口啜ってみると、ほどよい辛さで魚貝のダシがよく効いていた。

「うまい!!」

これはゴハンが欲しくなる…あれ?ゴハンがないぞ。

「Rice please」

俺の英語にすっかりビビッてたじろいでいるらしく、無理のある笑顔で小さく頷き返すのが精一杯なおばちゃん。

しばらくののち。

まっ白い皿が出てきた…。

「Rice please!!」

前回よりも気迫のこもった俺の注文に、おばちゃんは慌てながらも怪訝な顔でスープを指差し何か必死に説明している。

何だかよくわからないので、それでもゴハンをくださいと強引に押し通した。

しぶしぶと、ギンギラの蓋付き金属製茶碗を運んでくるおばちゃん。

そうそう、いいじゃないか。

ゴハンを一口パクつく。

スープを啜る。

パーフェクトなコンビネーションが軌道に乗りかけたそのとき。

「…ん?」

底の方から、ゴハンが姿をあらわした。

スープではなく、雑炊だったのだ(写真②)。

写真②…ゴハンと共に韓国ノリまで供され、全ては順調だと思われたが…

写真②…ゴハンと共に韓国ノリまで供され、全ては順調だと思われたが…

おばちゃんは、これを説明したがっていたのである。

なんだか無性に「負けた」感じがした。

それにしても俺の人生に、まさか韓国で雑炊をお供にゴハンを食う日がやってこようとは。

腹の中に炭水化物の充満具合を感じつつ、ホテルの部屋へ戻ってきたところで携帯にメールが。

【28日の後楽園、中止になりました】

さしたる動揺はなかった。

そうなる可能性の方が遥かに高いと分かっていたからである。

しかもそれ以上に、ハッスルが組織としてすでに機能していないことを、内部にいる俺はとっくに熟知していた。

キャンセルに伴い身辺が慌ただしくなることが予想されたので、中止に伴う必要最低限な処置を迅速におこなっておくに限る。

俺は当日後楽園へ発送してもらう手はずになっていたTAJIRIくんTシャツの発送先変更に着手した。

そんなこんなでアッという間に午後4時。

試合会場へ向かう時刻である。

5分ほど遅れてロビーに降りると、ルートゥが生意気にも腕時計に目をやりながら

「ファイブ ミニッツ レイトォォォ!!」

と、アメリカ人気取りの5流イングリッシュで叫んでくるではないか。

その英語、見せかけだけだってことは分かってんだよ!!…って、それはさっきの俺か。

会場はバスで20分ほどの距離。

オリンピックに使用された体育館で、WWEも韓国公演の際は同所を使用する馴染みのある会場だ(写真③)。

写真③…おそらく7000人は収容できます

写真③…おそらく7000人は収容できます

我々外国人軍団を、カタコトの日本語が得意なWWA若手筆頭(実は若手が一人しかいない)キム・ミンホくんが控室まで案内する。

彼はプロレスリングNOAHに練習生として在籍していた時期があるので、日本のファンもご存知な方は多いであろう。

で、控え室。

壁には既に、本日の対戦カードが貼られていた。

「俺、今日誰とあたるんやろか?」

初めてとなる韓国での試合に、緊張を隠せない橋本選手。

相手はナントカというオッサンである。

このオッサン。

以前聞いた話では副業で相当稼いでいるらしく、韓国のホテル王とのことであった。

しかも前回の遠征で目にしたのだが、自らが経営するホテルの名前をガウンの背中に縫い込みちゃっかり宣伝しまくっているという、燃える商魂の持ち主でもある。

ただし、そのホテルはあろうことかラブホテルであると聞き

「なんて見境のない商魂だ!!」

と呆れ返った記憶があるのだが、そこは前述したとおりラブホテルとビジネスホテルの境界が曖昧な韓国のこと。

橋本選手にとって強敵であることになんら変わりはない。

そんな話で盛り上がっているところに、見覚えのある黒い巨漢が姿を現す。

「TAJIRI Saaaan!!」

ボブ・サップ大明神、堂々の光臨。

予想もしない異国で再会したとなると話もはずむ。

「今週は韓国。それが終わったら日本のIGFで、その翌週にはフランス、その次は南アフリカ。相変わらず、俺様は世界を股に掛けるインテリジェンス・モンスターだぜ、ガハハハ!!」(意訳)。

まさに、プロレス・スーパースター列伝に登場する騒々しい外国人を地でいくナイスガイだ。

その一方、控室の片隅で非道さんと円華クンが、呆然とした顔で何やら今しがた起きたことについて真剣に語り合っているではないか。

「どうしたんですか?」

「いやな…誰だか分からないオッサンがいま控室に入ってきてな、そこの誰かのカバンの奥の方にあった水を勝手に取り出して飲んで、またカバンに戻したんや」

「呆れましたよ…」

韓国、恐るべしである(写真④)。

写真④…控室には、韓国のシェフが丹精込めて焼き上げた魂のピザも用意されている

写真④…控室には、韓国のシェフが丹精込めて焼き上げた魂のピザも用意されている

おそらく何の説明もなしに、定刻より1時間近く遅れ試合開始。

橋本選手は例のホテル王相手に、第一試合で敗れてしまった。

しかもそれが酷い試合だったらしく、橋本選手自身「人生でいちばんダメな試合だった」と、このまま滝壺に飛び込んでしまうのではないかと思えるほどの凄まじい落ち込みっぷり。

「あんなヘタクソなヤツ、許されていいんですか!?」

オッサンの技量に相当な問題があったらしく、次第に怒りが込み上げてきたようだ。

「だけど橋本選手。あのオッサン、大金持ちのホテル王らしいよ」

「…マジっすか!?」

「ゴマをすってきます」と言い残し、オッサンの控室へ足早に消える橋本選手。

彼もまた‘‘列伝‘‘に登場してきそうな、素晴らしいキャラクターの持ち主である。

俺は試合巧者GENTAROを相手に、お互い基本技ばかりで15分ほど戦い抜き、辛くも勝利をおさめた。

それにしても驚いたのが、まるで壊れたギアでも取り付けられているかのように変幻自在で高速になったり低速になったりするレフェリーのカウントである。

なんでもない首投げで音速のようなカウントを取ったかと思えば、絶対決まるような大技でシャクトリ虫の歩みのように低速なカウントを入れるのだ。

しかもあとで判明したのだが、そのレフェリー。

勝手に水を飲んでカバンに戻したオッサンだったから、韓国プロレス界の底は知れない。

試合後の大宴会も毎度恒例(写真⑤)。

写真⑤…この日はなんと高級な牛肉!!

写真⑤…この日はなんと高級な牛肉!!

ホテルへ戻ると、俺はハッスル関係の処置で相変わらず大わらわだったが、隣のレザー・フェイスの部屋では非道さんを中心に、まだまだ宴が続いているようであった。

と、部屋の電話が鳴った。誰だろう、こんな夜更けに。

「ハロー?」

「…スリスリ」

「スリスリ?」

「…」

「スリスリ」とだけ言い残し、電話の向こうから男の声が聞こえてくることは二度となかった。

「スリスリ」とはいったい何なのか!?

ハッスルの今後のことも相まって、頭の中が混乱を極める韓国二日目の夜であった。

―続く

写真⑥…新日の菅林社長にそっくりなオジサン(左端)が宴席にいたことも、頭の中が混乱をきたした大きな要因のひとつである

写真⑥…新日の菅林社長にそっくりなオジサン(左端)が宴席にいたことも、頭の中が混乱をきたした大きな要因のひとつである


コメント(閉):13

TAJIRIさんのファン 2009年12月29日

長文ご苦労さまでした。

ルートゥの弟子 2009年12月29日

放浪記きたー
橋本選手(ノ∀`)アチャー
ついでに、のび太くんのお母さんにTAJIRIさん完全に負けてしまいましたね(ノ∀`)
そういえばボブ・サップ韓国の芸能方面でも人気とどこかの記事にあったきがします…。
続編お待ちしてまする。

RINKO 2009年12月29日

相変わらずTAJIRIンの頭の中は遊園地のようだねぇ\^o^/
何時間でも話しを聞いてたいですわ!私の頭の中にもいろんな映像が浮かんできますですヨ(O_O)
た〜のしッo(^-^)o

(`・ω・´) 2009年12月29日

「スリスリ」なんでしょう?_?
気になるので続きを早くーーーっと言いたいですが
お忙しいので気長にまっておりますです(`・ω・´)
菅林社長たしかに似てる!
もうちょっと歳とって、たらふく
ご飯食べたら写真の方になっちゃいますね(`・ω・´)

ずろこ 2009年12月29日

レポート楽しく読ませていただきました。
毎度その表現力&洞察力&文章力にうっとりしてしまいます☆
続編も楽しみにしていますね。

中1男子のTAJIRIファン 2009年12月29日

長文お疲れ様でした
レポート楽しく読ませていただきました
毎回、その表現力&洞察力&文章力にはうっとりしてしまいます
続編楽しみです
菅林社長確かにそっくりですねぇ

あさいむーんさるとぉ 2009年12月29日

放浪記読んでいて愉快痛快(古!)です。
胡散臭い人達と出来事を、面白おかしく書かせたら
TAJIRIさんの右に出るプロレスラーは絶対いませんね。
続編楽しみにしております。
個人的には「魂のピザ」が妙にツボでした(笑)。

kajio 2009年12月30日

TAJIRIさんから見た、韓国プロレスのデタラメさと強烈さを想像させるエピソードの数々は笑えたり引いたり…いろいろ考えさせられます。

橋本選手の観察日記も含めた続編にも期待をしております。

よしこ 2009年12月30日

大木金太郎さんの追悼興行の時ですか?違ってたらすみませんもしそうだとしたら試合は、勝ったんですか?

yatszin 2009年12月30日

あ、ほんとだ!菅林社長に似てる!(笑)

TAJIRI 2009年12月30日

大木さん追悼興業です。結果は…本文中に書いてありますよ!
次回分には、韓国の強烈すぎるスポーツジムが登場してきます。お楽しみに。

tajirikoreafan 2010年2月11日

4編はオンゼオルラオナです? referee問題は本当にあらら言うことがないですね韓国プロレスリング….. 審判は悪役ではないがやじ受けてそうですね Hashimoto選手と試合した姜荊冠選手競技力は本当にハルマルイオブスブニだ…..

tajirikoreafan 2010年2月11日

refereeも若い人でかわるはする wwaです…

ホーム > 新・さすらい放浪記 > 新さすらい放浪記…韓国編その③

アーカイブ
リンク
携帯・モバイル

ページの上部に戻る