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暴動寸前…トルコは魔法のプロレス大国だった!!


 

右がトルコの英雄、TPW選手権者ムラット・ボスポラス。左は一番弟子の巨漢・TPWタッグ選手権者ビッグボーイ。(撮影・新田さん)

「恐怖の大王」の正体を追いかけ、TAJIRIが最後にたどりついた先は欧州最果ての地トルコ。

ベルギーで合流した、ドイツ在住日本人記者の新田さんも一緒です。

イスタンブール空港へ到着すると、身長190センチ体重200キロは確実にありそうな、超巨漢がオレたちを待ち構えていました。

ホテルが用意してあるから、こい!と、ブロークンな英語で言います。実に横柄な態度です。

車に乗せられました。

「東西文化が融合する国」なんてよく言われるトルコですが、まさしくそのとおり。

これまで世界各国くまなく周ってきたオレの眼にも、車の窓から見える光景は「おとぎ話の国」そのものな無国籍感が漂っています。

巨漢の男が言うには、今夜TAJIRIの試合が組んである。対戦相手はトルコの…否、我々の親方であるムラット様だ、とのこと。

ベルギーのときと同じく用意周到に、やはり試合が組んでありました。

これは「お前(TAJIRI)もよく知っている人物」(コバック談)という「恐怖の大王」が、現在のオレの実力を査定しているのだと考えるべきなのでしょうか。

どちらにしろ、そのムラットとかいう親方が「恐怖の大王」解析に関するすべてのカギを握っているとするならば、どんなにアウェーな状況であろうと戦う以外にない…覚悟を決めました。

車はメチャクチャな運転でホテルに向かいます。

人を轢こうが、他の車にぶつかろうが、一切知ったこっちゃねえと言わんばかりの荒い運転。この車だけがそうなのかと思ったら、他の車も全部そうなのです。気性の荒い国民性…今夜は用心してかからなねば。ムラットに対してだけではなく、リングを取り巻く観衆全員を敵と思って戦わねば…そうして「恐怖の大王」の正体を、今夜こそ明らかにしなくては…モスクを形どった魔法の宮殿のようなホテルに到着しました。

巨漢はオレの顔を見てニヤリと笑い4時に迎えに来ることを告げるや、ドスンドスンと廊下に轟音響かせ立ち去っていきます。まるで魔法のランプから出てきた巨漢の魔人が、霧の中にその姿をくらましたかのようでした。

4時になり、ドアがノックされました。

さっきの巨漢ではなく、背が高く細いけれどもガッチリしている、カミソリのように目つきの鋭い男が立っていました。

「いくぞ!」

またもやブロークンな英語が、さらなる不気味さを醸し出します。

ワゴン車に乗せられました。後方シートがすべて取り外してあり、空間にはペルシャ絨毯が敷き詰められています。

「そこに座れ」

車が走り出します。相変わらず荒い運転。何度通行人と接触しそうになったことでしょう。道を横切っているのが子供であろうと老人であろうと、まったく気にせず突っ込んでいきます。あまりの傍若無人ぶりに、だんだん腹が立ってきました。

「ヘイ、スローダウン!」

目つきの鋭い男の肩をつかんで忠告すると、男は振り向いてキッ!とオレを睨みつけるや

「これがトルコのマナーなんだよ!!そんな国で安全運転しろたあアホか、お前!?」

とことん醜悪な笑みを浮かべ、絶叫するように言い返してきました。

何を言っても無駄だと思い、おとなしく座っていることにしました。

会場到着。

想像していたよりも、近代的で綺麗な建物でした。

オレの試合はTPW(トルキッシュ・パワー・レスリング)選手権、vsムラット・ボスポラス。

新田さんにお願いし、ムラットがどんなヤツか探ってきてもらうことにしました。

数十分後、顔色の青ざめた新田さんが戻ってきて、このような情報を掴んできてくれました。

○ムラットはベンチプレスで230キロを挙げ『トルコ一の力持ち」と呼ばれている

○身長はそれほどでもないが、腕の太さや胸の厚さが凄まじい

さらに

○空港に迎えに来た巨漢は、ビッグボーイというムラットの一番弟子である

○あれほど巨漢なビッグボーイをも、ムラットは子供扱いしてしまう

ムラットの実力は相当なもの…

オレは、ECWやWWEで何度も対戦経験のある タズ を頭に浮かべてみました。体型的に、そらくタズと同じような戦法をとってくるに違いない。それならば力づくで強引にブッこ抜いてくる投げを狙ってくるだろう…あれこれと対策を立てました。

「出番だぞ!!」

さっきの目つきの鋭い男が控室のドアを乱暴に開けました。リングに向かいます。新田さんはあとに続きます。

もの凄いブーイング。子供や青年らが、入場するオレの背中をバチバチと叩いてきました。それを制止するセキュリティーは、当然いません。駆け足でリングに上がりました。会場に、渦のようなブーイングが轟きます。ムラットがベルトを掲げ入場してきました。

「ウオオオオオオオオオー!!」

会場には一転して、ムラットを賛美する声援が渦巻きます。

「ムーラット!!ムーラット!!ムーラット!!ムーラット!!ムーラット!!ムーラット…」

鳴りやまないムラットコール。セコンドには、ビッグボーイが付いています。

リングで対峙したムラットは、ニヤリと笑いこのようなことを早口にまくしたてました。

○「恐怖の大王」の弟子である俺様の実力がいかほどのものか、その身体をとおして知れ

○そうして貴様が俺様の実力に恐れをなしたとき、「恐怖の大王」の正体を教えてやる

○そうしてさらに恐れおののき、リングの上で震えあがり、欧州最果ての地トルコで生き恥を晒せ

アラーの神をたたえ、天高く両手を掲げるムラット。

その瞬間、会場の興奮が頂点に達したようでした。

ゴングが鳴ります。

いきなり、首から背中にかけもの凄い衝撃が走りました。

先制のラリアットを喰らってしまったのです。喉元に棍棒を打ち込まれたような衝撃でした。

そして次の瞬間、オレの身体は宙高く舞い上がっていたのです。Tボーンスープレックス!!やはりムラットは、タズと同じように強引な投げ技を使ってくる。

試合は、ムラットが圧倒的優位のまま進んでいきました。オレが攻められる都度、会場内には歓喜の叫びが響き渡ります。

そうして攻められながらも、ムラットは攻撃を仕掛けるさいアラーの神へ祈りを捧げるパターンを持っていることに気が付きました。

そこを突破口になんとか逆転を狙ってはみるものの、あまりの怪力になすすべがありません。気が付くと、オレはコーナー近くに投げつけられていました。そうして両手を掲げたムラットのシルエットが、ライトをの中でオレに降りかかってくるのが見えた次の瞬間…

フロッグスプラッシュで全体重を浴びせられました。怪力だけではなく、飛び技も駆使するとは完全に想定外でした。

なんとかキックアウトしたものの、この攻撃で完全に戦闘不能となってしまったオレは、余裕をちらつかせゆっくりと起こしにおくるムラットのガラ空きな顔面めがけ、グリーンミストを噴射したのです。

顔面を両手で抑え、リングの上をのたうち回るムラット。

ゴングがけたたましく打ち鳴らされ、ビッグボーイがもの凄い剣幕でリングへ上がり、ムラットにドスンドスンと駆け寄りました。

すると瞬時にして、会場内に狂気の怒号が渦巻いたのです…この空気はヤバい!!

まだアメリカにいた頃、黒人の多いルイジアナのニューオリンズと、ブロディ刺殺で有名なプエルトリコのサンファンで暴動を起こしかけたことがあるのですが、そのときと同じ空気なのです。

「恐怖の大王」のことはすっかり頭から消え去り、新田さんと二人で一目散に逃げ出しました。

花道に、群衆が押し寄せてきます。手を出してくる気性の荒い連中ともみ合うオレたちの背中めがけ、あらゆるモノが投げつけられてくる。最初はライターに靴や食い物など、当たっても怪我はしない軽めのモノばかりだったのですが、そのうち瓶やイスが飛んできたのでいよいよヤバくなり、オレは手近にあったイスを掴み振り回しました。

真っ先に、子供たちが逃げ惑います。しかしそれが大人たちの怒りにかえって火をつける結果となってしまい、より一層の瓶やイスが飛んでくる。オレはイスを振り回したままダッシュしました。新田さんは頭からうまい具合にイスをかぶりダッシュする。なんとか控室まで逃げ切ることができました。

しかし、このまま会場にいては危険です。どうやらムラットのマイクアピールで会場は平静を取り戻しつつあるものの、ヤツらが戻ってきたら何をされるか分かったものじゃありません。それでもオレは今のこの状況を、事のなりゆきを見守ってくれている日本のファンに向け発信せずにはいられませんでした。戦場カメラマンが命を落とそうとも、最後の瞬間まで職務に命を懸けるのと同じ心境でだと思います。そのさいの、決死のつぶやきがこれです

「やばい。会場が暴動になるかも。逃げなくては」

すぐに会場を脱出し、ホテルも変えるべきだと判断しました。

急いで荷物をまとめ、控室から走り出します。と、向こうから、ムラットとビッグボーイが姿をあらわしたのです。

ワケのわからない言葉で何か叫び近づいてきます。

どうする!?それでもムラットは視界を奪われているはずだし、ビッグボーイはそれほど機敏とは思えない…決死の覚悟で走り、ヤツらの横をすり抜けました。

ビッグボーイが掴みかかるのを寸でのところでかわし…

やった!!逃げ切れたのです。そのまま振り向くことなく走り続けました。

と、背後から、ムラットの叫びが響き渡ったのです

「まて、TAJIRI!!「恐怖の大王」の正体を知りたくはねえのか!?」

そうだ!!「恐怖の大王」のことを想い出たオレは、ピタリと足を止めました。

振り向くと、ヤツらとの間にはすでにかなりの距離が出来ている。新田さんは望遠体勢でムラットの撮影に入りましたが、その手はガタガタと震えています。

そうしてムラットの絶叫は、このように続いたのです。

「この恨みは俺様の真のボス「恐怖の大王」が晴らしてくれるから覚悟しておけえ!!いいか、「恐怖の大王」の正体はなあ…」

その瞬間…

「恐怖の大王」のすべてが判明したのだ!!

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